≫Extra chapter5 とくべつ (09.08.11)


・・・愛されたいから、だろ・・・。俺もお前も、・・・あいつに



◆My love story - Extra chapter 5◆



廊下を歩くイザークの背中は凛として、自信がないなんて見ただけでは片鱗も感じない。 けれどそれはただ表に出さないだけで、彼の心では深く、とても深く考えているのだろう。

『・・・それでも、僕の方が自信ないですよ』

ニコルはイザークに聞こえないように小さく呟いた。 ニ、三歩後ろを歩くだけではプラチナブロンドから覗く耳に聞こえていたかもしれない。 でも、不安な気持ちを思う今、口にせずには居られなかった。

だって、やっぱり自信が無いのは、間違いなくこっちの方だ。 物分りが良いフリをして、にこやかに笑って全てを受け入れているつもりでいるけれど、 本当はイザークのように素直な言葉で表してぶつかってみたい。

そんな事をしたらが困るのが分かっているから出来ないだけで、自分が嫌われると知っているから言わないだけだ。 イザークが代弁してくれているから安心して乗っかってる。



― ズルインダ ホントウハ ―



の、にこやかに笑う顔、優しい声で伝える素直な気持ち、大事なものを守る為の決意。 出来ることなら、それらを全部全部、護ってあげたい。 クルーゼに信じ頼っているの思いを、自分が出来るならどうにだってしてやりたい。 が一人きりで無理に立つことの無いように、義務感に縛られることの無いように。

『あ、そうか』

そこでふと、ニコルは気がつく。イザークの言った本当の意味を。

『愛されたいって、こう言う事か・・・』



自分の全てを捧げて、捧げただけの笑顔が欲しいんだ。 ― の、あの笑顔が。



ニコルは自然と口元に手をあてた。誰かをこんなにも想った事が今まであっただろうか。



『ニコル?』

コツコツと鳴らしていた足をピタリと止めて、振り向く。 それに気づいたイザークも歩みを止めて訝しげにニコルを見ると、 ニコルは長い廊下の向こう、小さく見えるドアを一視して諦めたような、情けないような笑顔を浮かべる。



の笑顔を望む自分、イザーク、きっとそれはアスランやディアッカも一緒だ。



『笑ってもらうには』

先ずは迷うのではなくて、羨むのでもなくて。純粋に、「自分が」出来ることをしなくてはいけない。 どうしたら良いのか、しっかりと考えなくてはならない。何を望むかより、それが先決だ。

『・・・何でも無いです。行きましょう』

ニコルは笑顔で返すとイザークの隣に並んだ。 そして、突然清清しい顔になったニコルに眉を寄せるイザークの腕を取ると、無理矢理歩き出す。 まだ本当の行動は分からない、―でもしたい事は見つけた。自然と、ニコルの歩む速度は速くなる。



彼女を想う気持ち それは、淡い恋に似ていた