≫Extra chapter 気まぐれ、じゃない (09.01.12)
『どうしたんですか?私を誘いに来てくれるなんて』
食堂へ向かう途中、珍しく、と言うか初めて自分を迎えに来たイザークに戸惑うミントの周りをひらりひらりと舞うマイクロユニットの蝶。
『・・・ただの気まぐれだ。ん?』
横切るそれを見てイザークは端正な顔を顰めた。
◆My love story - Extra chapter◆
幾ら彼女に興味が無かったとは言え、
確か地球に降下する前まではそんなものを持ってしていなかったような気がする。
と、言うか此処までチョロチョロとするものが今まで居たのなら、視界に入らない筈が無い。
先程もコイツが突然現れた事には少し驚かされたが、それは秘密にしておこう。
『それ、どうした?』
そう聞くと隣を歩いて居たミントが、マイクロユニットへ視線を寄せる。
そしてゆっくりと何かを考えた後、華のような笑顔を浮かべてこう答えた。
『これは、休暇中にアスランに作って貰ったものなんです』
余りにも嬉しそうに、そして愛おしそうにそれを見るミントの顔に、イザークは歩き慣れない地球の重力に足をおぼつかせた。
『そ、そうか・・・』
硬くなったイザークの表情にも気付かずに、笑んだミントはマイクロユニットを眺めていた。
イザークもつられてそれを見ると、白い羽をゆったりと羽ばたかせるそれは美しく、
そう言えばアイツの部屋に行けばいつも変な部品がデスクの上に散乱していて、
確かそんな趣味を持っていたな、と宇宙にまだ居るライバルの事を思い出させる。
しかし心に引っかかるのはどうしてだろう。
彼女の顔が大事そうにそれを見るからだろうか。
それともアスランが彼女にプレゼントをした事を意外だと思っているからだろうか。
いや、意外と言うか、こんな手間のかかるものを何とも思っていない相手に渡すだろうか。
答えは分からない。
けれど二つとも気にかかる材料なのだろう。
そう考えているイザークを見て、ミントは首を傾げた。
何やら考え事をしている彼は迎えに来た事も含めて「珍しい」とばかりに。
『どうしました?あ、もしかしてイザークもこれが欲しいとか?』
『いや、嬉しそうだな、と思って・・・』
イザークは自分が発した言葉にハッとして口を閉ざす。
考え事をしている時に探るような事を言うのはやめて貰いたい。
彼女の場合、そんな事を考えて言っていないのは分かるが、だからこそ性質が悪いと言うものだ。
思わずさらりと思った事を言ってしまうではないか。
しかしイザークの考えも伝わる事が無く、ミントはふふふと笑って指に留まった蝶を見た。
『私、誰かに何かを貰ったの初めてなんです』
ただの考えすぎか?
素直に出された返答にイザークの頭にそんな言葉が過る。
けれどやっぱり大事そうに蝶を見る顔はアスランに向けてのものなのだろう。
幾ら感謝の気持ちが籠っているとは言え、なんだか気にかかる。
自分にそんな笑顔、向けてくれた事は一度だって無いのに。
そう思うとライバルに一歩前を歩かれている気がしてきた。
『では、俺も休暇が取れたら何か見つけて来てやろう』
フン、と鼻を鳴らしてそう言うと、ミントの顔がピクリと歪む。
『ど、どうしたんですか、そんな事言って。私の事嫌いなのに』
『嫌いとは言って無いだろう。失礼な奴だな、貴様は。ただ婚約はごめんだっただけだ』
―あの時は。
そう紡ごうとしたけれど、止めた。だってだからと言って今から婚約するとは言えない。
そんな都合の良い事は言わない。
けれど、あんまりにも嬉しそうに話すものだから、その笑顔を自分にも向けて欲しいと思った。
「婚約はごめん」も同じ意味だ、失礼なのはどっちですか、と頬を膨らます目の前の彼女に、柔らかい笑みが零れる。
だから今度何かプレゼントしてみようかと思ったのは、ただの気まぐれではない。